縮み始めたSIの荒野にこそ勝機ありと見るべきか

日経コンピュータ最新号の表紙で特集タイトル「SIと運用が消える」が刺激的に映る。

ITバブルの頃はソフトウエア開発会社とひとからげにされた下請け受託開発会社もその豊かな時代の恩恵にあずかり、繁栄を謳歌していた。が、そういう仕事はとっくの昔に中国やインドに流れ、SIとか運用とか開発というよりはサービスの方向へ舵をきることで生き残ってきた企業が多いはずだ。

純粋に開発で食えているのは、ごくごく限られた数の企業だろう。さらにそれは必ずしも技術力が高いとかそういう理由ではなく、ある安定した大企業の関連会社だとか、強力な人脈をもっているとか、そういう技術以外の強みを生かしてきた会社が少なからずあったと思われる。

だが、これまでいいお客様だった製造業が低価格競争にあえぎ、余力をなくしている現在、パイがより一層小さくなってゆくと考えるのは悲観的に過ぎるということもないだろう。大きなシステムをスクラッチから作るなんていう贅沢ができるのは、資金潤沢なごくごく限られた大企業だけ。大多数の企業は、クラウドでコストカットに突き進むことになる。ライバル他社はすでにそうして低コスト経営を可能としようとしているのだから。
 
クラウドの時代にクラウドサービス提供事業者は、スケールメリットが最大の武器になる。これを容易に達成できない中小事業者が苦戦を強いられるのは避けられず、企業の統廃合が進み、業界は再編成が進んでいるようにみえる。

こうしたなか、これまでシステム会社と名乗ってきたインテグレータはどうなるのか。自力でサービスを産み出す力のある企業は、サービサーとして繁栄できるだろう。下請けとして今後も生き残れるのは、極めて高い技術をもつ企業ということになるだろうが、そういう会社なら自力で展開できる可能性もあるはずで、下請けに甘んじ続けるというのはあまりいい経営判断ではないかもしれない。

Windows8のマーケットからアプリを色々インストールして試しているところなのだが、横長画面のデスクトップで使うかぎり、なかなか面白いし、使いやすい。Windowsのソフトをパッケージ化して流通にのせるのは結構大変なプロセスだったのだが、これなら小規模の開発事業者が市場に戻ってこれるだろう。Windows8のマーケットはタブレットが主力となるのだろうが、タブレット用のアプリを自力で興せる企業は、はたしてWindows8マーケットを選ぶのだろうか。

AndroidとiOSの収益性を比較した調査結果が最近公表されたが、iOSの収益力はAndroidの4倍であるとされた。そうすると、技術とセンスのある開発会社が率先してiOSよりもAndroidよりもWindows8を優先させる理由があまり見えてこない。それに、デスクトップ栄えするアプリは、HTML5でも実装できるような仕様にも見えてくる。あえて金をかけてアプリを開発維持する必然性のあるサービサーばかりではないだろう。アプリをインストールしてもらうよりは、HTML5でサイト閲覧してもらうというほうが、圧倒的に敷居は低いはず。特にブランドとして確立していない無名のサービサーならなおのこと。

これまでSIとか運用で食ってきた会社は、こうした自前のサービスで食うように業態転換できるのだろうか。かなり難しいだろう。SIと運用では、ということではなく、アプリ開発で食う、というのがそもそも難しいと考える。アプリのビジネスは、これまでのところ、一握りの勝者と残り大多数の死屍累々という光景を生むようだ。アプリ開発を受託する形ならある程度の安定した収益性は確保できるだろう。アプリのサービスを本業にするのは、大変、なのだろう。

SIも運用も先細りだというなら、さらに成長分野への業態転換も難しいとなるなら、この業界は、詰んでいる、ということになるのかもしれない。

だけど、いや、何か新しい展開の方向があるはずだ、というややオプティミスティックに過ぎるかもしれないスタンスを、私は個人的にはとりたい。そこに解を見つけることが出来れば、かつて大手の撤退が続いて不毛の荒野と見なされ始めたインターネットモール業界で楽天が果たしたような役割を果たすことで、巨大な力を得られるのかもしれないのだ、あるいは。

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このページは、utが2012年6月 9日 12:22に書いたブログ記事です。

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